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松山家庭裁判所 昭和53年(少)6038号 決定 1978年10月02日

少年 I・Y(昭三三・一二・二三生)

主文

少年を中等少年院(交通短期課程)に送致する。

理由

(非行事実)

少年は

第1  自動車運転の業務に従事している者であるが、昭和五三年三月三一日午後一時二〇分ころ、松山市○○町×の××先の信号機のない交差点付近を普通貨物車を運転して時速約四〇キロメートルの速度で進行中、左方道路から進入してくる車両の有無、動静に注意して安全であることを確認して進行すべき注意義務があるのに、そのさらに前方の信号機のある交差点で信号待している車両に気を奪われ左方の安全確認を怠つた過失により、折から左方道路より進入してきたA(当五二年)運転の第一種原動機付自転車の発見が遅れ同自転車前部分に自車左前部分を衝突させ、よつてAに対し全治3週間を要する頸椎捻挫、右肩胛部打撲等の傷害を負わせた、

第2  (1) 同年五月二日午後一一時二〇分ころ、○○町○○前付近道路上において、普通貨物車を運転して時速約五〇キロメートル位の速度で蛇行運転しながら前車を追越し、もつて他人に危害を及ぼすような方法で車両を運転した、

(2) 同年五月九日午後一〇時一分ころ、○町×丁目○○前付近道路上において普通乗用車を運転し、公安委員会の定めた指定速度(以下単に指定速度という。)毎時四〇キロメートルを二六キロメートル超過した毎時六六キロメートルの速度で進行した、

(3) 同年六月二日午後一一時二〇分ころ、○○町○○公民館前付近道路上において、指定速度毎時四〇キロメートルのところ一八キロメートル超過した毎時五八キロメートルの速度で普通乗用車を運転した、

(4) 同日午後一一時二一分ころ、同町○○前付近交差点において、普通乗用車を運転して、信号機で表示された止まれの合図(以下単に赤信号という。)に従わないで右交差点に進入、通過した、

(5) 同日午後一一時二四分ころ、○○町○○前付近交差点において、前記車両を運転して赤信号に従わないで交差点に進入、通過した、

(6) 同年同月二七日午後四時五二分ころ、○○町×の×付近道路において普通乗用車を運転して進行していた際、車両停止線の設置された横断歩道上を横断しようとしている歩行者がいるのに、その前方を通過して一時停止をしなかつた、

(7) 同年九月八日午後九時五五分ころ、○○町×丁目○○前付近道路上において、法令の定める前照灯をつけないで普通乗用車を運転した、

(8) 同日同時刻ころ、同所交差点において、赤信号に従わないで同車両を運転した、

(9) 同日同じころ、○○町×丁目○○前付近交差点において、赤信号に従わないで同車両を運転した、

(10) 同日午後九時五七分ころ、公安委員会が道路標識で表示して右折禁止場所と指定した○町×丁目○○前付近道路において同車両を運転し、これを右折した、

(11) 同日同じころ、○町×丁目○○前道路において同車両を運転し右折するに際し、法令の定める合図をしなかつた

ものである。

(適条等)

判示第1の所為は刑法二一一条前段に、第2の(1)は道路交通法一一九条一項九号、七〇条に、(2)、(3)はいずれも同法一一八条一項二号、二二条一項に、(4)、(5)及び(8)、(9)はいずれも同法一一九条一項一の二、七条に、(6)は同法一一九条一項二号、三八条一項に、(7)は同法一二〇条一項五号、五二条一項に、(10)は同法一一九条一項一の二、八条一項に、(11)は同法一二〇条一項八号、五三条一、二項に、それぞれ該当する。

調査、審判の結果によると、少年は判示第1、第2の(1)ないし(6)の各違反等により試験観察中であつたところ(特に第2の(3)、(4)、(5)の違反は警察官の制止を振りきつて逃走した事案である。)、再度警察官の制止を聞かず逃走するという違反を反覆し、しかもその発端は単にスリルを味わうため敢えて信号無視をしたというものであつて、少年の交通法規に対する考え方、遵法精神の欠如は憂うばかりである。さらに、調査官○○○○作成の少年調査表、調査意見報告書及び鑑別結果に顕われている少年の資質・性格・生活態度等によれば、少年の有する問題性はなお深く、本件各違反は少年のこれらの問題点の突出したものとみるべきで、その生活態度を改善させるため相当強い指導が必要であるといわざるを得ない。

以上によると、少年を少年院に収容することはやむを得ないというべきであるが、その処遇については少年の興味、関心の的はもつぱら「車」であつて、その生活態度の乱れにも拘らず一般非行性はほとんど考慮する必要のないことを考えると、少年を交通短期課程に組み入れたうえ、あわせて一般的生活指導をも施していくのが相当であろうと思料する。

よつて、少年を中等少年院(交通短期課程)に送致することとし、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 郷俊介)

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